ねえ、小丸君。みんな戦争を忘れてしまったんだろうか? ――いや、知らないんじゃないんですか。
昭和四十×年八月八日夜八時ごろ。ある高校のある教室。
1 佐藤 小瀬
佐藤 おーい、おーい。
小瀬 おーい、おーい。
佐藤 おーい、おーい。
小瀬 おーい、おーい。聞こえましたか?
佐藤 いや、ちっとも聞こえない。
小瀬 やっぱり、まだ来てないんでしょうか?
佐藤 来てないんだろう、まだ。しかし、七時半に来てくんなきゃァね。
小瀬 そうですね。二人だけじゃァ、さびしいですもんね。
佐藤 まァね。しかしほんとかね。
小瀬 何がですか?
佐藤 いや、ほんとに来るのかね。
小瀬 みんなですか?
佐藤 いや、ほんとに出るのかね。
小瀬 お化けの野郎ですか?
佐藤 しーっ。大きな声でいうなよ。聞こえたら気を悪くするじゃないか。
小瀬 そうですか? そうですね。
佐藤 ほんとに出るのかね。
小瀬 東北さんは柔道二段でしょう?
佐藤 そうだよ。講道館の正式のだよ。
小瀬 強いんでしょう?
佐藤 強いさ。たいがいのやつはこわくないさ。
小瀬 じゃァ、お化けなんかへっちゃらですね?
(続きは郡劇会員のみ。書籍でお読み下さい)
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